九州大学神経内科では平成30年度の専門医研修(後期研修)の申し込みを随時受け付けています。定員は6名を予定しています。神経内科入局を検討されている先生は是非一度御連絡ください。以下に九州大学神経内科の特徴や入局後の進路についてご説明します。

【新専門医制度について】

2018年4月からの新専門医制度に向けての新内科専門医のプログラム募集が開始されています。内科のプログラムについては2016年12月に、日本内科学会が大幅な見直しを公表しています。以下の「内科領域プログラム作成に関するポイント」(http://www.naika.or.jp/jsim_wp/wp-content/uploads/2016/12/point.pdf)をごらんください。

九州大学ではサブスペシャルティ重点研修タイプがプログラムとして利用可能となる予定です。このプログラムでは3年間で内科専門研修を修了する事を前提に、期間を設ける事なくサブスペシャリティ(神経内科)研修を並行して行う事が可能です。この場合、神経内科専門医の取得条件の達成時期は、今までと同様にすることが可能です。

新内科専門医で経験すべき症例に関しては、内科領域全体は70の疾患群(ログ)に分けられています。(http://www.naika.or.jp/jsim_wp/wp-content/uploads/2015/08/2015-log.pdf)このうちの8割に相当する56疾患群から少なくとも1例を経験することが内科専門医の修了要件となります(ただし各領域において半数以上の疾患群、例えば消化器の9領域については5領域以上、を経験する必要があります)。このうち9疾患群は神経なので、神経内科専攻医には問題なく経験できると予想されます。従って、残りの神経以外の61疾患群のうち、47疾患群を経験すればよいということになります。

内科専門医の修了要件は160例の症例経験ですが、この半数にあたる80例を初期研修からの取り込めることになりました。従って、例えば、初期研修のうちに47疾患群のすべての症例を経験すれば、それで、神経内科以外の内科の修了要件を満たすことになります。

神経内科を志望する初期研修医の方は、初期研修のうちになるべくvarietyに富んだ内科症例を経験し、かつそれを記録に残しておくことが重要です。卒後3年目以降早期に神経専門研修に重点を置いた研修を行うことが可能となります。

 

1. 神経内科病棟・外来診療について
初年度は九州大学病院の医員のポストで雇用され、神経内科病棟医として主治医を勤めます。病棟医長、病棟副医長(いずれも教員)が神経診察や診断・治療などに関して直接指導を行っています。大学病院では市中病院で診断が困難な症例や原因不明の症例が多く入院するため、病棟医は日々神経所見の変化を観察し、検査結果や文献的検索から原因を突き止めていく力が要求されます。神経内科医としてスタートした時期にこのようなトレーニングを積むことで、神経内科医としてのスキルが磨かれていきます。さらに、病棟では教授回診、病棟医長回診が毎週行われ、診断や治療方針について活発に議論されています。また、教授・准教授の新患外来にベシュライバーとして同席し、神経診察や病歴聴取など外来診療技術を直接学ぶことができます。当科の教員は多発性硬化症・視神経脊髄炎をはじめとした脱髄性疾患、重症筋無力症、その他の神経免疫疾患、神経変性疾患、運動ニューロン疾患、てんかん、脳卒中、認知症など様々な神経疾患の専門家がいますので、広く深く学ぶことができます。当科では積極的に学会発表や症例報告を勧めており、プレゼンテーション技術や論文作成についても経験できます。

 

Kleopas Kleopa教授をお招きして。病棟医によるプレゼンテーション
図1. Kleopas Kleopa教授をお招きして。病棟医によるプレゼンテーション。(クリックで拡大)

Kleopa教授による神経内科回診時の様子
図1. Kleopa教授による神経内科回診時の様子(クリックで拡大)

 

2. ブレインセンター、神経生理・神経病理について
当科の後期研修の大きな特徴は、臨床神経生理検査の実地修練がとても充実していることです。九大は日本でも唯一、臨床神経生理学教室(飛松省三教授)が講座として独立しており、九大病院には神経生理検査や高次脳機能検査を集約して検査できるブレインセンターが設置されています。臨床神経生理学教室の教員から様々な神経生理学的検査の手ほどきを受け、所見の読みとり方を学ぶことができます。これには、針筋電図、末梢神経伝導検査、各種大脳誘発電位検査、運動誘発電位検査、脳波、脳磁図などがあり、病棟主治医を勤める傍ら、それぞれの検査部門をローテートして外来・入院患者さんの検査について実地に学びます。さらに、ブレインセンターでは当科の脳卒中専門医が頚部エコー・経頭蓋超音波検査を直接指導します。また、各種自律神経機能検査機器もブレインセンターに導入されております。筋生検・末梢神経生検もそれぞれの病理の専門家がいますので、実地に学ぶことができます。さらに、九大は脳神経病研究施設として神経病理学講座(岩城徹教授)とも協力して診療しており、病理学的所見について相談できる体制をとっています。このように各種の脳・神経・筋検査を系統的かつ効率良く専門家から直接学べる点は、他の大学病院や市中病院にはない特徴と考えます。

 

末梢神経伝導検査の様子。
図3.末梢神経伝導検査の様子。(クリックで拡大)

頚部血管エコーの様子。
図4. 頚部血管エコーの様子。(クリックで拡大)

 

3. 抄読会・カンファレンスについて
毎週木曜日朝に神経内科全体の抄読会を行っています。さらに研究グループ毎に基礎研究に関する抄読会が開催されています。毎月第1週目には、神経内科病棟入院患者で興味ある症例について主治医が脳研全体で発表する神経カンファレンスが行われます。九大放射線科(とくに神経放射線科医)との神経画像カンファレンスも月1回実施しており、興味深い画像や診断困難な症例について意見交換を行います。また、当科には多くの大学院生や留学生が在籍しており、脳・神経疾患に関する研究精力的に進めています。教室員による研究の現状報告や今後の方針について発表するリサーチセミナーも毎週開催されており、活発な議論が行われます。脳研カンファレンスや高次脳機能障害セミナーでは、高名な研究者の講演会も開催されます。また、当医局が関係した福岡市で開かれる研究会・講演会は多数あり、新しい学識を得る機会は豊富にあります。

Joege Oksenberg教授による脳研カンファレンス
図5.Joege Oksenberg教授による脳研カンファレンス。(クリックで拡大)

Abdolmohamad Rostami教授による脳研カンファレンス
図6. Abdolmohamad Rostami教授による脳研カンファレンス。(クリックで拡大)

 

大学院生による質疑応答
図7. 大学院生による質疑応答。(クリックで拡大)

4. 関連病院での研修
専門医研修初年度には実地診療を通じて、指導医の下で神経学の基本的診察から診断の考え方、検査の実際とデータ判読、治療方針まで系統的に学ぶことができます。これらの基本を身につけた上で、2年次・3年次は関連病院神経内科で、常勤医またはレジデントとして急性期疾患を主体に研修をします。大学とは異なり、脳卒中や意識障害、痙攣発作など神経救急に従事する機会も多く、急性期医療の臨床経験を積む事ができる貴重な期間となります。さらに、病棟主治医として研修するのみならず、神経内科外来診療の経験を積んでいきます。頭痛、めまい、しびれ、痛みなど幅広い神経内科外来診療ができるようになることはとても重要です。当医局関連の急性期病院は、神経内科は3~6名のチーム医療を行っている施設が大部分ですので、常時指導を受け幅広く研鑚を積むことができます。

5. 神経内科専門医取得について
関連病院で神経内科の症例を多数経験した後は、日本神経学会が実施する神経内科専門医試験を受験します。神経内科専門医は、臨床研修歴が6年以上あり、かつ教育施設で3年以上、または教育施設で2年以上と教育関連施設で1年以上、あるいは教育施設で1年以上と教育関連施設で3年以上神経内科を研修すると受験資格が得られます。したがって、卒後7年目から受験できることになります。専門医になると神経学的診察の手技料が加算されるため、神経内科医はどこで勤務するにせよ神経内科専門医資格を持つことがとても重要です。当科ではこれまで長年の専門医試験受験に関するノウハウが蓄積されており、同期による勉強会も毎年開催されますので、常に高い合格率を維持しています。

病棟医の勤務の様子。
図8.病棟医の勤務の様子。(クリックで拡大)

6. 九州大学神経内科の現状について
平成29年度の当医局の状況ですが、大学教員が 9名(神経治療学寄附講座を含む)、医員が7名、大学院生が 26名(うち 4名は基礎医学教室へ出向中)、国内外機関への留学・研修が 9名(なお海外から当教室への留学生は 5名)。関連病院は現時点で26あり、部長や医長を除く医師派遣は42名です。脳卒中や脳血管内治療専門医を志望する医師は、関連病院の中でも済生会福岡総合病院や福岡市民病院、小倉記念病院などで研鑚を積み、国立循環器病センターや湘南鎌倉総合病院などへの国内留学も勧めています。研究希望の先生は国内外の基礎医学研究室や臨床医学教室に留学し、最先端の医学研究に携わっています。なお、当医局では伝統的に出身大学による待遇・人事の差別は全くしておりません、神経内科専門医を志す医師を広く受け入れています。平成 28年度の後期研修医の出身大学は、九州大学以外に広島大学、鹿児島大学、防衛医科大学など多岐に渡っています。神経内科は今後益々社会的に必要とされる診療科であることは間違いなく、同時に神経難病の病態解明・治療法開発といった医学研究の進歩に貢献する責任があると考えています。脳・神経疾患の臨床・研究に興味ある先生方の入局を心からお待ちしております。

 

(平成29年4月1日 吉良潤一 )